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手芸も写真も好きなので、
outfitを作ったり、
いろんな場所で写真を撮ったり。
そんな活動の記録です。
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2周年を記念して、小説を書きました。
ストーリーとしては、
現在発表している【有栖とアリス】の後になります。
小夜子視点の、とある1日。
お楽しみください。
「あーちゃんっ。あーそーぼっ♪」
ニーナがいつもみたいに
ぬいぐるみを持ってリビングにやってきた。
「あぁ、いいぜ。何するんだ?」
意外と有栖も面倒見がいいのよね。
兄弟でもいるのかしら?
…そういえば、有栖のこと
何も知らないんだわ。
「ん? どうした??」
あらっ、いけない。
お夕飯を作る手がとまっていたわね。
「なんでもないわ」
そう言うと、包丁を動かした。
「おまえの『なんでもない』は、
なんでもなくないだろ。
言ってみろよ」
どうしてこの人は
私が何か考えていると
すぐにわかるのかしら?
「いつもニーナと遊んでくれているから
兄弟でもいるのかしら…と思っただけよ」
「気になる?」
有栖の方を向くと、
覗き込むようにこちらを窺う視線とぶつかる。
決まりが悪くて視線を手元に戻す。
「べ、別に…」
「……弟がいる」
「え?」
「弟がひとり…だ」
「そ、そう…」
初耳だわ。有栖に弟がいるなんて。
「あーちゃん…」
カウンターの下から、
ニーナのつまらなそうな声が聞こえた。
「おう、悪かったな。
って、それひっぱるな」
『それ』が気になって視線を向けると、
ニーナが有栖のストールを引っぱっていた。
「あーちゃん、いっつもそれしてるよね」
「大切なものだからな」
大切な…って、それっ、あのときのストールっ。
「世界で一番のお姫様から貰ったんだぜ」
ちょっ…、お姫さまって……。
「おひめさまって、だぁれ?」
なに言ってるのよ、ニーナ!
そんなに直球で聞くことはないじゃないっ。
「あー。それ、私も聞きたいなぁ。
おひめさまって、誰?」
薫令ちゃんも便乗しないの。
もうっ。
どうすればいいのよ…。
―と、有栖が意味ありげに視線を流す。
あ…。
そういえば、有栖に告白…されたのよね。
『俺が小夜子を守るよ。
だから…もっと頼っていいんだ』
なんで思い出すのよ、私っ。
有栖になんて頼らなくても大丈夫なんだから。
そうよ、私は有栖がいなくても平気。
「ナイショだ」
え?
「えー。なんでぇ? おしえてくれたっていいじゃんっ」
「はははっ。ナイショ。絶対教えねぇ」
「あーちゃんのケチっ」
…そうよね。
何考えたのかしら。
私が有栖のお姫さまなんて。
さっさとお夕食作っちゃいましょう。
「小夜子」
夕食後、部屋に戻ろうとしたら
有栖に引き止められた。
「何?」
「愛してる…」
え?
いきなり抱き締められて、
びっくりしたわ。
しかも『愛してる』ですって?
「でも、あなたには
『世界で一番のお姫様』がいるんでしょう?」
だから私を抱き締める意味がわからないわ。
そのお姫様は私じゃないのに。
「いるぜ」
ほら。だったら抱き締める相手は…。
「ここに」
こ…こに? どこに?
「あーもうっ。小夜子が俺のお姫様だろっ」
私?
きょとんとしていると、
有栖は腕をほどいて視線を合わせた。
「俺が守りたいと思っているのは、
小夜子だけだ。
たとえ、小夜子が俺をどういう風に思っていたとしてもな…」
あ…。私、まだ返事をしていないんだった。
このままじゃ、ダメよね。
えっと…。
「時間を、もらえるかしら。
まだ…わからないの」
「……はぁ。少しは期待していいんだな?」
期待って言われても…。
私は、どうしたらいいのか…。
「今日はゆっくり休め。
別に返事はいつでもいいから。なっ」
「うん…、ありがと」
そう言って、私は部屋に戻ったわ。
そう。なんでもない一日。