10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
手芸も写真も好きなので、
outfitを作ったり、
いろんな場所で写真を撮ったり。
そんな活動の記録です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
【Boy meets girl... 第14回】
クリスマスイヴ。
綺麗に着飾ってティアラをした小夜は、
ピンクのファーを巻きつけていた。
やっぱり可愛いじゃん。こーゆー服も着ろよなぁ。
機嫌がいい俺とは反対に、小夜のご機嫌はあまりよくないようだ。
そりゃそうか。
無理矢理よびだしたんだもんな。
そんな彼女を車に乗せると、臨海方面へ向かった。
12月が誕生日で、クリスマスもあるなんて、
プレゼントあげる方からしたらめんどくせぇよな。
俺はまた物をあげる気がしなくて、
イルミネーションを見せることにした。
どうせ小夜のことだから、そーゆーとこ行ったことねぇだろうし。
横をちらりと見ると、ファーをとって、抱えていた。
その下はケープ…ってことは、ひょっとして半袖かノースリーブ?
イルミネーションやめるかねぇ。外寒いし。
こうしてドライブってのもいいかもな。
さりげなくヒーターを強めて考える。
…と、その手に視線を感じた。
気を使ったの、バレた?
それにしては何も言ってこねぇし。
うーん…。
もう一度、小夜を見ると、やはり同じ方を向いている。
視線をたどると、その先にあるのは時計だった。
「なにか用事でもあったか?」
「妹が家で待ってるの。パーティーをしたいって」
あー…。強引に誘っちまったしなぁ。
家族でクリスマス…か。
「何時までに帰ればいい?」
「できればお夕食までに…」
「おっけぃ。じゃぁ、ちょっととばすかな」
いっきにアクセルを踏むと、小夜はスピードの出しすぎだと慌てていた。
そんな様子に笑って、さらに加速する。
呆れたのか、喚くのをやめたようだ。
どうしているのかと思ったら、小夜は夜の海を見ていた。
まるで、ここに俺がいないかのように、ひとりで…。
―却下。さっきのドライブは却下。
ひとりの世界にいるような女といっしょにドライブなんてできねぇよ。
強引にでも連れ出さないと。
イルミネーションのツリーが飾られた会場は
幻想的な雰囲気に包まれていた。
ここに着てから、小夜の顔が明るい。
マジで、物語からでてきたお姫さまみてぇだ。
「ありがとう」
先を歩いていた小夜は振り向いて満面の笑みをみせた。
これが見たかったんだよなぁ。
…ヤバイ、とまらないかも。
次の瞬間には、小夜を抱き締めていた。
「寒くないか?」
「え、えぇ…」
照れ隠しでそんなことを言うと、小夜は戸惑いながらも返事をしてきた。
俺が守って、甘えさせて、愛してやりたい女がこの腕の中にいる。
離したくない。なぁ、お前はどんな顔をしているんだ?
「あの…アイリス?」
『アイリス』
こっちを向かせようとしたときに呼ばれたその名前が、ひどく不快だった。
バンドを立ち上げてから、ずっとそう呼ばれていたのに。
だれもが俺をアイリスだと思い、アイリスと呼び、それに答えていたのに。
小夜にはそう呼ばれたくない。
俺の本当の名は―。
「有栖。俺の名前は『有栖』だ」
小夜の顔を向けさせて、その瞳を見つめる。
「あら、それって有栖川有栖の有栖?」
「なんだそれ?」
「ミステリー小説家よ」
ミステリーねぇ…。2時間サスペンスくらいしかしらねぇよ。
「で、どう書くんだ?」
「有明の月の『有』に、木へんに西って書いて『有栖』よ」
有明の月…なんて例えられたのは初めてだよ。
小夜子らしいっていえば、らしいんだろうけど。
「うん、正解。その『有栖』だ。小説…読むんだな」
「本を読むのは好きよ」
声が少し弾んでいる。本当に好きなんだろう。
「あ、名前…。私は―」
「待った。礼儀とやらで教えてもらいたくない。
小夜が教えてもいいと思ったら、教えてくれよ」
小夜が何かを言うその声にかぶって、携帯の着信音が鳴った。
慌てて小夜がでる。
「あら、薫令ちゃん?」
かおれ…? あー、同居してるっつぅ友達か?
友達に邪魔されたのか…くそっ。
「ぐずってるの?―待つって……」
携帯を持っている手から時計を外そうとする。
…こういうときに頼れっていうんだ。
「もう7時すぎてるぜ」
あー、言いたくなかった。でも俺のお姫様はシンデレラだもんな。
時間がきたら…
「え? もうそんな時間? すぐに帰るわっ」
やっぱり。言うと思った。どうせ家で妹がだだこねてるんだろ。
まぁ、仕方ないか。
小夜を守るなら、『それ』込みだ。
「送る。車まで戻んなきゃな」
「えぇ…」
そう言って走り出す小夜。
ったく、ホントにシンデレラかっての。
そのうち転ぶぞ、おい。
「きゃぁ」
言わんこっちゃねぇ。
俺は後ろから抱えあげるようにして支えてやった。
「足は挫いてないか?」
「平気。それより…っ」
「何が『それより』だ」
思わず大声で怒鳴りつけてしまった。
俺の腕の中で身をすくめている小夜を見て、
落ち着け…と自分に言い聞かせる。
「まず、自分の身体を大事にしろ。
小夜にはやりたいことがあるんだろ」
ぎこちなく頷くのを見て、俺は離してやった。
それから手を引いて車まで戻る。
今度は、危ない目にあわせたりしないように。
づづく…