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手芸も写真も好きなので、
outfitを作ったり、
いろんな場所で写真を撮ったり。
そんな活動の記録です。
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まだアイリスと小夜子の出会い編ですね。
たぶん6月か7月ごろの話だと思われます。
いえ、細かくは決めていなかったんですけど、
アレコレ考えると、おそらくそのあたりかと。
季節感はまったくありませんが、
続きをお楽しみください。
【Boy meets girl... 第7回】
どうやら俺が寝ている間に勝手にマイクを設置して
録音していたらしい。
何度も俺の名前が聞こえたのはそのせいだろう。
とりあえず録音は終わりにして、
簡単にミキシングして聴かせてくれることになった。
…それにしても。
「録音の日まで同じ着物で来るなんて律儀だねぇ」
「そうですか? 同じ服のほうが同じ気持ちがだせると思って…」
「似合ってるから、別にいいけど」
そう、彼女に着物は似合う。
今まで着た、どんな服より、着物がいい。
ただそれだけのことだったんだけど、
彼女はうつむいてしまった。
「………」
「ん? なんだって?」
「あの……っ。ありがとう…ございます」
よく見ると耳まで真っ赤で、言ったこっちまで照れてくる。
『あんまり俺の周りにいなかったタイプだなぁ』
照れ隠しなのか、慌てて教科書を広げる彼女を、後ろから覗き見る。
「試験前なの?」
「いいえ」
「勉強好き?」
「いいえ」
うーん。じゃぁ、なんで試験前でもないのに勉強してるんだよ。
俺なんか試験前だって勉強しなかったっていうのに。
まぁ、だから、こーんな出席がユルイ大学行ってるんだけどねぇ。
でも、彼女は俺とは違って、何もしなくても勉強できそうだし。
「なんで勉強してるの?」
「5をとるためです」
5ってとれないんじゃなかったっけ?
以前横浜に行く時に交わした会話を言ったら、
「それはアンケートの場合です。
学校の成績評価なら、5をとれる人数は決まっています」
相対評価ってやつか。
もう絶対評価になってるんだと思ったけど、彼女の学校は違うのかな?
しかし、そんなに躍起になって5をとる理由って…
推薦くらいしか思いつかないんだけど。
「推薦受けるの?」
思い切って聞いてみた。
こういうプライベートの話に答えてくれるかは疑問だったけど。
「指定校推薦を狙っています」
予想外に、きっぱりとした答えが返ってきた。
たしか彼女、高校1年だったはずだから、
今からやっておこうってことか。
『やっぱり計算高いねぇ』
そう思った。
思ったんだけど、なんかさっきのイメージと違う。
もっと初心で可愛い普通の子っぽかったのに。
「なんで指定校なの?」
「一般受験よりお金がかからないからです」
『やっぱり金か! さっきのは演技?』
内心がっくりきていた。俺の周りは俺の金で遊ぼうとするヤツらばかり。
もう、うんざりだ。
―と、彼女が言葉を継いだ。
「私がお金を使わなければ、家族にラクをさせてあげられるから」
『え?』
思っていた理由とは違う。
自分のためじゃなくて、家族のため?
「もしかして、大学卒業したら就職するの?」
「はい。お給料は少ないかもしれませんが、安定していますし。
なにより、モデルは長く続けられる仕事ではありませんから」
俺よりしっかり将来のこと考えてる。
彼女って―小夜って、
けっこう芯の通った子なんだ。
でも…それって辛くないのか?
この前も思ったけど、いい作品つくってもらうために憎まれ役になったり、
家族のために今も働いていて、さらに勉強もしている。
高1の女の子がそんなことまで考えて…投げ出したくならないのか?
ミキシングが終わったとリーダーが手招きした。
新しく録り直した音をふたりしてヘッドホンで聴く。
小夜の横顔を盗み見ると、満足そうに、うっとり微笑んでいた。
づづく…